「羊をめぐる冒険」の翻訳(117)
2 羊博士登場 (1)翌朝の八時に目を覚ますと、我々は服を着こんでエレベーターで下に降り、近所の喫茶店に入ってモーニング?サービスを食べた。いるかホテルにはレストランも喫茶室もないのだ。
「昨日も言ったように、我々は手分けして行動するんだ。」と言って僕は羊の写真のコピーを彼女に渡した。「僕はこの写真の背景に写しっている山をてがかりに場所を探してみる。君は羊を伺っている牧場(ぼくじょう)を中心に探してほしい。やり方はわかるね?どんな小さなヒントでもいいんだ。盲滅法に北海道をうろつきまわるよりはまだましだからね」
「大丈夫よ、まかせておいて」
「じゃあ夕方ホテルの部屋で会おう」
「あまり心配しちゃ駄目よ」と彼女は言ってサングラスをかけた。「きっと簡単にみつかるから」
「だといいけれどね」と僕は言った。
しかしもちろん物事は簡単には運ばなかった。僕は道庁の観光課に行き、様々な観光案内所と観光会社を巡り、登山(とざん)協会を訪ね、およそ観光と山に緑がありそうな場所は全部まわった。しかし誰一人として写真に写った山に目覚えのあるものはなかった。
「とても平凡な形をした山だしね」と彼らは言った。「それに写真に写っているのはそのまた一部ときてるからさ」
僕が丸一日歩きまわって得た結論といえばただそれだけだった。つまりよほど特徴のある山でない限り、一部分を見ただけでその名前をあてるのはむずかしいということだ。
僕は途中で書店に入って北海道全図と「北海道の山」という本を買い、喫茶店に入ってジンジャー?エールを二本飲みながら読んでみた。北海道には信じられぬほど多くの山があり、そのどれもが似たような色と似たような形をしていた。鼠の写真に写った山と本に出ている写真の山をひとつずつ見比べてみたが、十分ばかりで頭が痛くなった。それにだいいち本の写真にとりあげられている山の数は北海道の山全体から見ればほんの一部なのだ。それに同じひとつの山でも見る角度を変えるだけでがらりと印象が違ってしまうこともわかった。「山は生きています」と筆者はその本の序文に書いていた。「山はそれを見る角度、季節、時刻あるいは見るものの心持ちひとつでがらりとその姿を変えてしまうのです。従って我々は常に山の一部分、ほんのひとかけらしか把握してはいないのだという認識を持つことが肝要でありましょう」
やれやれ、と僕は声に出して言った。それからもう一度無駄であることが認識された作業にとりかかり、五時の鐘(かね)を聞くと公園のベンチに座って鳩(はと)と一緒に玉蜀黍をかじった。
彼女の方の情報の質は僕のよりは少しはましだったが、徒労に終ったという点では同じようなものだった。我々はいるかホテルの裏手にある小料理屋でささやかな夕食をとりながら今日一日のお互いの身の上話を交換しあった。
「道庁の畜産課では殆んど何もわからなかったわ」と彼女は言った。「つまり羊はもう見放された動物なのね。羊を伺っても採算があわないのよ。少なくとも大量飼育?放牧という形態ではね」
「じゃあ少ないぶんだけみつけやすいとも言える」
第二天早上八点醒来,我们穿好衣服乘电梯下楼,到附近的咖啡馆吃早饭。在海豚宾馆没有餐厅也没有咖啡馆。
“就像昨天说的那样,我们分头行动。”我把羊照片的复印件交给她。“我以照片背景的山为线索寻找地点,你以搜索养羊的牧场为中心找羊。知道怎么做吗?别管是多小的线索也好。与盲目无目标在北海道找相比还是这样为好。”
“没什么问题,尽最大努力完成。”
“那么,到傍晚在宾馆的房间碰头。”
“不用那么操心了。”她说着戴上了墨镜。“肯定能简单地完成。”
“你说的挺容易。”我说。
但是事情并没有那么简单。我去了政府的旅游局,找各类的旅游导游部和旅游公司,走访登山协会,找尽与旅游观光和在山上有绿的相关地方。没有一个人对照片背景的山有印象。
“这是一座非常普通的山。”他们说。“照片上的也只是其中的一部分。”
我忙碌一天所得到的结果是:限于这样没有什么特征的山,只看其中的一部分来确认它的名字很难。
我在途中去了书店,买了北海道全图和《北海道的山》书,去咖啡馆喝了两瓶姜汁气水,看着书。在北海道有无数的多如牛毛的山,都是相似的景色和相近的形状。将老鼠在照片上所记录的山和书上所登载照片的山一一对应相比,只用十分钟就很头痛。而且书上照片所提供的山的数量只是北海道山总量的极少一部分。即便是同一座山,只要视角一旦有所变化给人的印象也就完全不同。“山在生长变化着。”作者在书的序文中写着。“山这个东西,因观赏的角度、季节、时间甚至当时的心情都有所变化,其形象也会有变化。所以我平常也只掌握山的一部分、一小局部。能有这种认识很重要。”
原来如此。我说出了声。然后又开始作业已经认为无用事情,听到5点钟的报时声就坐到公园的长椅子上和鸽子一起啃起了玉米。
她所做的情报收集作业的质量比我好一些,但也是以相同的徒劳为终点。我们在海豚宾馆后面的一个小餐馆简单地吃了晚餐,交流了今天一天各自的经历。
“在政府的畜产科几乎什么都不知道。”她说。“羊已经是放弃的动物。即便是养羊也划算不来。很少有大量饲养放牧的状态。也就这些。”
“也可以说在这样养得少状态下就容易发现。”
两人忙碌了一天却没有什么收获。
山穷水尽疑无路?